痴呆症・・・予防とケアのテクニック
その1:脳血管性痴呆とは・・・?
「食べたこと」さえ忘れるのが痴呆症
 よく知っている人なのに名前が出てこない、お昼になにを食べたか忘れてしまった・・・。そんなことが増えると「痴呆の始まりでは?」と不安になりませんか?しかし、老化による単なる物忘れと痴呆症とは内容や程度が明らかに違うのです。
 痴呆症の場合、人の「名前」が出てこないだけでなく、家族や親しい人でも、その人との続柄や関係などがわからなくなってしまいます。また、食べた「メニュー」が思い出せないだけなら通常は単なるもの忘れですが、痴呆症では「食べたこと自体」を忘れたり、忘れたことを取り繕って間違ったメニューをはっきり答えたりします。ほかにも、老化によるもの忘れと痴呆症には下表のような違いがあります。最近、ものわすれがひどくて・・・、そんな場合は要チェックです。

もの忘れと痴呆症の違い
老化によるもの忘れ 痴呆症
  1. 体験の一部分を忘れる
  2. 物の名前を忘れることが多く、物ごと自体はさほど忘れない
  3. もの忘れを自覚している
  4. 人や場所、時間はほぼ正しく認識できる
  5. 日常生活に大きな支障はきたさない
  1. 体験全体を忘れる
  2. 物の名前だけでなく、物ごと自体も忘れる
  3. もの忘れの自覚に乏しい
  4. 人や場所、時間を正しく認識しにくくなる
  5. 日常生活に大きな支障をきたすことがある

痴呆も種類はいろいろ
 痴呆症のおもな種類は「アルツハイマー型」と「脳血管性痴呆」の2つで、現在、この2つで痴呆の約8割を占めています。
 従来は脳血管性痴呆のほうがやや多かったのですが、最近は逆転し、アルツハイマー型痴呆の割合が増えてきています。
「ぼけは防げない、治らない」と思っている人もいますが、痴呆症も、予防や治療、あるいは進行を遅らせるてだてが増えています。それだけに、自分と家族のために、早いうちから正しい知識と関心を持ちたいものです。
動脈硬化を防げば予防可能!「脳血管性痴呆」
 高血圧や高脂血症、糖尿病などがもとで脳の動脈硬化が進み、ついには脳梗塞や脳出血がおこると、脳細胞に十分な血液がいきわたらず、部分的に機能が損なわれてしまいます。その結果としておこるのが脳血管性痴呆です。8割ぐらいは、脳梗塞や脳出血による脳卒中発作のあとの後遺症として起こり、残る2割は小さくて明らかな症状を起こさないような脳梗塞が次第に増え、脳血管性痴呆が起こるケースです。
 脳卒中発作に引き続いておこる場合は、痴呆にまひなどの神経障害を伴うのが特徴です。記憶力は失われても、判断力はかなり残っているなど、「まだらぼけ」と呼ばれるように症状のあらわれ方に偏りが見られるのも特徴です。
早期治療・リハビリで改善も!
 もともと高血圧や高脂血症、糖尿病などがある人は、その治療を継続し、必要に応じて、血液が固まるのを防ぐ「効血小板薬」や、脳の血流を促す「脳循環改善薬」などを用います。
 こうした薬・生活両面のケアで、脳血管性痴呆はある程度、予防も改善もできるものです。とくに脳卒中発作後は、あきらめず、からだと脳のリハビリに取り組むことが大切です。
予防のカギ!ぼけ予防10ヶ条
  1. 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
  2. 適度に運動を行い足腰を丈夫に
  3. たばこと深酒はやめて規則正しい生活を
  4. 生活習慣病(高血圧・肥満など)の予防・早期発見・治療を
  5. 転倒に気をつけよう。頭の打撲はぼけを招く
  6. 興味と好奇心を持つように
  7. 考えをまとめて表現する習慣を
  8. 細やかな気配りをした良い付き合いを
  9. いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
  10. くよくよしないで明るい気分で生活を
「痴呆症かも・・・」のときの対処術
 できるだけ早く治療を始め、適切な介護をするためには、まず痴呆症を早期発見することが大切です。そこで、痴呆症のサインと介護の基本ポイントを紹介します。
早めに医師に相談を
 老化による単なるもの忘れと痴呆症の症状には気をつけていればわかる違いがあります。家族は日ごろからさりげなくチェックし、痴呆症の早期発見に努めたいものです。痴呆症の疑いを感じたら、
  • まずはかかりつけのないかの先生などに相談しましょう。本人も、あまり抵抗なく受信に応じてくれるかもしれません。
  • 精神科、神経内科、老人科、脳神経外科であれば、さらに詳しく検査できます。ある程度大きな病院のこれらの科なら、一般に痴呆の専門的な検査も行っています。

痴呆症も、早く正しい診断を受けることが、まず第一に重要なのです。
痴呆に関するご相談は当院へどうぞ。
次回は、痴呆症の中でも最近耳にする「アルツハイマー」についてご説明いたします。