タバコを吸っている人に知っておいてほしい病気が「COPD」(慢性閉塞性肺疾患)です。この病気は世界で4番目に多い死亡原因で、今後さらに増えてくることが予想されています。
また、タバコを吸っている人や周囲の人たちも「タバコを吸っているんだから、せきやたんが多かったり、少しぐらい息苦しくても当然」とそのままにしがちです。
でも油断は禁物!気がついたときには症状が進んでいることも多いのです。
このように、COPD予備軍とCOPDであるのに診断がなされていない人を考慮すると、現在COPDと診断されるものは、まさに氷山の一角と言っても過言ではありません。
あなたの大切な人はどうですか?思い浮かべてみましょう。
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●COPDってなに? |
COPDには、大きくわけて、細胞が悪くなる「肺気腫」と、気管支が悪くなる「慢性気管支炎」があります。
それでは、肺胞が悪くなったCOPDとはどういう状態でしょうか?・・・・・・・・・・
肺には、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という小さな袋があります。この肺胞がこわれてふくらんで、肺で酸素を取り込む力が弱くなって、息苦しさを起こすことになります。これを「肺気腫」といいます。
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← 健康な肺
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肺気腫 → |
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それでは、気管支が悪くなったCOPDとはどういう状態でしょうか?・・・・・・・・
肺には、気管支という空気の通り道が通っています。そこに炎症が起きると、せきが出たりたんが多くなったりします。
また、気管支がはれるので、空気の通り道がせまくなって、息苦しさを起こします。この状態が長い間続くことを「慢性気管支炎」といいます。 |
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↑健康な気管支 |
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↑慢性気管支炎 |
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●COPDと診断されたらどうなるの? |
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COPDにいちどかかると、細胞や気管支は残念ながらもとにはもどりません。ですから、この病気の治療は
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病気が悪くなるのをできるだけ遅らせる |
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症状をやらわげる |
3. |
以前どおりに生活できるようにする |
●タバコは今すぐSTOPしましょう! |
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タバコを吸っていてCOPDと診断されたら、なによりも先に、まず禁煙することが第一歩です。そのままタバコを吸い続ければ、急坂を転げ落ちるように症状が悪くなります。 |
●症状が進行したときは・・・ |
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さらに症状が進行すると、呼吸不全(血の中の酸素が非常に少なくなった状態)になることがあります。そうなると酸素を吸入する必要がでてきます。最近では、酸素を吸入する器械を自宅において、患者さんが自宅ですごすこともできるようになりました。 |
●からだの緊張をとりましょう |
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あまり息切れが続くと、知らず知らずのうちに体がこわばってきてしまいます。まず、首から肩、背中をマッサージしてみましょう。呼吸にかかわる筋肉の「こり」がほぐれてきます。 |
次のことに気をつけてみましょう。
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規則正しい生活をおくる |
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趣味を楽しむ |
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食事を楽しむ |
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睡眠をたっぷりとる |
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お風呂を楽しむ |
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●COPDは急に悪化することがあります |
COPDが急に悪くなると、それが原因で死にいたることさえあります。
次のような症状が起こったら、軽く考えずにすぐ病院に行きましょう。
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息切れがひどくなった時(動作時も含む) |
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足がむくんだり、体重が急に増えたとき |
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せきがひどくなったとき |
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心臓がどきどきするとき |
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熱が出たとき |
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たんの量が増えた時・たんの色が変わったとき(黄色・緑色・血が混じる、など) |
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肌が紫色になったとき |
また、このような症状がみられたときには、病院に行くまでの応急処置として、
◎呼吸が楽になる姿勢(上半身を起こした状態で、ふとんなどによりかかる)をとる
◎腹式呼吸をする、口すぼめ呼吸をする
◎体位を変えて、たんを出すようにする
◎病院でもらっておいた薬を飲んでみる
といったことをしてみましょう。 |
とにかく、「からだの調子が普段と違う」と感じたら、早めに対応しましょう。
さらに、迷わず病院に連絡を入れることが大切です。 |
監修:西村正治先生(北海道大学大学院医学研究科 呼吸器病態内科学分野 教授) |